アルファサード株式会社 代表取締役 野田 純生のブログ


ピンチと壁をどう乗り切るか - 会社とこれまでのこと(4)


公開日 : 2009-09-30 22:26:06


絶賛人材募集中につき (1) (2) シリーズその4です。

順番から言うとスタートアップ直後の営業の話を書こうと思っていたのですが、まぁ時間軸はいいや。

6年間、赤字なくやってきたわけですが、何度か危機的状況がありました。これまでで3度ですかね。今日はそこを書いてみます。

ごそっと人が辞める(しかも2回)、売上が頭打ちになる

人が辞めていく件は2度ありました。一回目は東京にオフィス構えて1年後。社員が複数同時期に辞めるということです。1人は元々1年経ったら辞めるという条件で、昔自分の部下(結婚して関東に移住した女性)に「手伝え」っていって立ち上げたオフィスでもあるので、それは織り込み済み。でも、彼女が辞める際に後の二人が揃って辞めていった。理由はいろいろあるけれど、ひとつはここに書いたこと。若いスタッフに難しいこと要求してたんだと思う。

[追記]やっぱり、いくら長い付き合いとはいえ当初から手伝い意識で来ていた人間に任せていた、ってのは今から考えると失敗だったかと。悪い子らじゃなかった。そこをなんとか出来なかったのは自分の責任。やはりトップである自分が語らなければならんのということは身をもって学んだかな。

で、次は大阪。こっちも立て続けに辞める事件(事件かよ!)。これは、もう明らかにこれだろうと思う。

もう一点。会社が変わっていく時、変化していく時、特に上に向かって伸びていく時ってのは、社員とのギャップが生まれて当然なんだと思う。会社のステータス、ステージが違えばそこに入ってくる人間のレベルやマインドが変わるし、1年前の会社と今の会社が違う方向に進んでいたら、ついていけないっていう人間も出てくる。でもある意味でそれは仕方ないんだと思う。

一回目の危機の時はどうしたか。力技でなんとかしました。東京に足場をってのは当初から考えていたから、オフィスを出したのは1年目です。逆に大阪にはスタッフがいなくて、1人大阪から東京の3人をみているといういびつな状況。何とか1年やってきたところで撤退するのはどうしても我慢出来なかったので、求人広告出してスカウトとかメール送りまくって2人採用して、東京にマンション借りて住み込んだ。これがあの有名な(?)「40過ぎて一人暮らしなんか(俺には)無理」事件です。ウチの仕事手伝ってもらってる人にはわかると思うんですが、今東京で仕事してるFとSはその時の2人です。ウチで4年くらいになるのか? なるんだろう。やっぱり接点の濃度とか時間が大切なんだろな、って。

さて、2度目の危機(大阪)はどうしたか。基本は同じです。人入れて、半ば強引に口説いて入れて、立て直した。でもこの時は少し方向が違っていて、それは3つめの危機の話とつながるのです。

数字が頭打ちになった時にどうするか

2007年、4期目のこと。1→2→3期と順調に数字が伸びて、ところが3→4は数字が伸びない。5期目もほぼ同じ数字になりそうな気配。伸びる要素がない。前職時代、5人程度のチームを率いて1.5億くらいの数字を上げていたのです。もちろん、粗利率が今と全然違って、アウトソース基本の会社だったってこともある。でも、その半分くらいの数字で頭打ちが来やがった。もう、この数字が自分の限界なの? って。社長の器以上に会社は数字を延ばせへんのです。それは事実。で、俺のこの数字ってのが俺の器なの? って。

その時ね、考えたんです。「変わろう」って。

リストラと転換と

変わろう、と思って最初にしたこと。人件費の削減。わかりやすいでしょ? でも社員の給料下げたんじゃない。一番給料の高い人間の給与を下げた。わりとごそっと下げた。一番給与が高いのは誰って? それ、自分に決まってるやん。自分の給料下げた。

で、何をしたか。

ブログ書いてた。っていうか、そうしようと決めたんですよね。もう、給料下げた分は儲かんなくていいやって。で、案件から離れてプラグラム書いてた。

あと、MTのプラグインとか。めっちゃ書いてた。書いてはブログにあげて、の連続。あんときゃ、一日一エントリ上げるのノルマにしてた。

これ見てよ。2007年7月アーカイブ。エントリ数って63ですよ。一ヶ月で。

「社長何やってんすか」てなもんですよね。社長案件やらんとブログばっかり書いととんねん。

でも、結局これがじわじわ効いたんだな。春頃から書きまくってて、その夏MT4のリリースとともにお声掛けいただいて、イベントで話したのです。

面白いのがその後の経緯で、このエントリに書いてるでしょ。

人月 vs パッケージビジネス

実はこれが一番考えさせられたというか痛いところにツッコミ来た感じで、トークの時に紹介した社内で使っているプラグイン「売らないんですか!?」の件。

「売るとサポート必要でしょう?」ってあたりまえの答えをしていたのですが、これは本音で、単価が100万円で売れるものならともかく、数万円のものを大量に売って(売れれば、だけど)顧客を管理してサポートして(それ以前にちゃんと集金して)ってまずそういうノウハウも体制もないわけで。

だからどこかが代わりに売ってくれれば考えるかな、ってのも本音ですね。レンタルサーバー会社さんとかがウチのプラグインとかライセンス込みプリインストールとかで高付加価値レンタルサーバーとかやってくれるとか。レンタルサーバー会社さんがよく制作会社にアフェリエイト的? な販売パートナーになりませんかとか案内来たり電話来たりするけど、単にサーバー紹介してマージンもらうみたいな商売はやりたくない。かといってホスティングビジネスやるだけのリソースもないし。

で、その舌の根か湧かぬうちに、笑うでしょ。上記のエントリが10月1日。リリースしたのが11月22日(いい夫婦の日)。

だから、今告白すると、僕はあの時苦しんでたんです。色んなことに。でも、腹くくって「数字はいいや」って割り切ることで、仕事離れて、飛躍するために膝曲げようって思ってた。膝伸び切ってたらジャンプでけへんし。

結果、それって仕事いいからってアクセシビリティ・ゲートウェイのプログラミングしてMTプラグイン書いて、結果としてオリジナリティの強い自社のプロダクトができて、ウチのスタッフも「これやっとけば食えるんや」ってわかって、結果としてその後人が辞めなくなった。

Power CMS for MT、結局間もなく2年、120ちょっとのサイトに入れていただきました。あんとき書いてたゲートウェイも結果的に自社プロダクトになってる。

結局は、覚悟を決めて膝を曲げる勇気を持てるかどうか

その昔、王監督が言ってたのを聞いたことがある。本物の長距離打者は腕が伸び切った状態で球を捕らえない。つまり、腕伸び切ってるとボールを飛ばせない。膝曲げないと飛躍できないんだよ。目先の儲けを追っているから膝を曲げられないってのは、それは「言い訳」なんだということ。

いいかい? 膝を曲げなきゃ飛べないんだぜ。そこにどんだけの覚悟があるのかい?

だから、ピンチと壁を乗り越えるってのは「覚悟を決めて、膝を曲げる」ってこと。つまりはそういうことなんだ。

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野田 純生 (のだ すみお)

大阪府出身。ウェブアクセシビリティエバンジェリスト。 アルファサード株式会社の代表取締役社長であり、現役のプログラマ。経営理念は「テクノロジーによって顧客とパートナーに寄り添い、ウェブを良くする」。 プロフィール詳細へ