アルファサード株式会社 代表取締役 野田 純生のブログ


ディスレクシアを理解する〜ディスレクシアとマルチメディアDAISY講演会の記録から〜


公開日 : 2021-12-13 17:30:00


一昨日の記事「ディスレクシア入門ー「読み書きのLD」の子どもたちを支援する アイコン別ウィンドウで開きます」に続き、ディスレクシアについて。

以前別の記事でも少し引用したのですが、ディスレクシアについて理解するのにとても役に立った(目からウロコの発見が多かった)ページを見つけたので、ご紹介します。

※ただ、この講演録にもある通り「一人一人の見え方は違う」という前提を忘れてはいけません。

かなり前のことになりますが、(財)日本障害者リハビリテーション協会が主催した、DAISYを中心としたディスレクシアキャンペーン事業「ディスレクシアの子どもたちへの読みの支援‐DAISYを使ってみよう」 アイコン別ウィンドウで開きますというイベントが開催されました。2008年11月とのことなので、すでに13年前のイベントの講演録になります。

DAISYとは、Digital Accessible Information SYstem (アクセシブルな情報システム) アイコン別ウィンドウで開きます のことで、再生用ソフト・製作用ソフトがあり、本や教材の提供に活用されています。

ディスレクシアとマルチメディアDAISY -当事者そして教育者の立場から

このイベントの中で神山忠さん(岐阜県立関特別支援学校教諭)が行った講演録があります。

ディスレクシアとマルチメディアDAISY講演会のページのスクリーンショット

この講演録が本当にいろいろな発見がありましたので、興味のある方はぜひ読んでほしいと思います。

鯛+言葉+ち?

「ことばのまとまりがわかりにくい」問題があります。ちょっと前にNHKが台風に関するツイートを全部ひらがなで行ったところ、「わかりにくい」「外国の人を馬鹿にしているように見える」みたいな意見がSNSで集まったのを覚えている方もいると思います。

たしかにすべて「ひらがな」だとわかりにくいと感じる人が多いように思います。でも、以下の話は小学生での話ですから、どうしてもそうなりますよね。

「たいことばち」

これは小学校の3年生の時ですが、音楽班にいました。音楽の授業の準備をする担当だったんですけれど、先生が、休み時間に、こういうメモをくれました。 私は前から順番に意味のまとまりを見つけようと頑張ったのですが、どういう風に読んだかというと、「たい」「ことば」「ち」…と分けてしまって、今日の給食は「鯛」?「ことば」は図書室かな、「ち」は理科室かな、保健室かなぁ・・・こっちから行った方が早いかな・・・などと思っていたら、音楽の始まる時間になってしまった。「ほんとになにやらしても使えんこだねぇ」としかられました。

では、どうするかというと、以下のようにするのだそうです。要するに「分かち書き」なのですが、間を空けるだけではなく、はっきりと区切って、意味のまとまりをわかりやすくする。

「たいこばち」

少しなれてくると、まとまりで意味(イメージ)を作ることができるようになり、以下の区切り方もできるようになったといいます。

「たいことばち」

前述のNHKのツイートの件でも「ひらがなのみ」てのが注目されましたが、ちゃんと分かち書きをされています。SNSは文字に色をつけられませんし、ルビもふれませんから「ひらがな+わかちがき」というのを考えてのツイートだったのでしょう。

「あるみかんのうえにあるみかんをもっていって」

先生が、「そうそう、神山くんの班だけひらがなで書いてあげてね」と。その時私はどう思ったかというと、今度の先生は僕のことをよくわかってくれてうれしいなとはとうてい思えなかったです。教室から駆け出したい、それができなければ、机の下に潜り込みたかったです。 (中略)

「アルミ缶の上にある蜜柑を持っていって」なのか「アルミ缶の上にアルミ缶を持っていって」なのか、ひらがなばかりだと分かりません。

私は字面なら意味がイメージとマッチングできますので、カタカナ・漢字・ひらがなが混在したほうが、音読はできなくても意味は何とかつかめます。 これは果物の蜜柑、こっちは缶だなってなるので、混在している方がありがたい支援だったのですが、「勉強できない子=ひらがなで」みたいのが支援の鉄則と考えられていて、それがより混乱の元でした。

小学校の教材の場合、習っている漢字と習っていない漢字の問題があって、よりわかりにくくなる例も示されています。

「ど力(努力)」「えん足(遠足)」「休けい(きゅうけい)」

なので、ある程度の漢字がわかっている人を対象にするには、漢字かな交じりのほうがわかりやすい、ということがあります。ひらがなの場合はわかちがきである程度カバーができるでしょうが、漢字かな交じり、ルビを追加、が良いのだと思います。

ところが、ルビをつけると文字の数が増えますし、ルビと親文字が近いと、一つの文字に見えてしまう問題などにぶち当たります。

私としては最初から熟語で表記されて、色を変えてふりがながあるとわかりやすいタイプです。つまり、色が一緒だと、最初に、素材と素地の見分けが苦手といいましたが、「害」は文字としてどこまでがまとまりなのか、わかりません。 たけかんむりの新種かなとルビを見て思ったりするので、色が違うと、ここがルビ、ここが文字だとわかるのです。

これらのことを読んで、私はやさ日ウォッチ アイコン別ウィンドウで開きますのデザインを調整し直して、ふりがなに色をつけることにしました。

ふりがなの色を赤く変更しました

※ とはいえ、繰り返しになりますが、この講演録にもある通り「一人一人の見え方は違う」という前提を忘れてはいけません。このことについてはまた別の記事にて。



このブログを書いている人
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野田 純生 (のだ すみお)

大阪府出身。ウェブアクセシビリティエバンジェリスト。 アルファサード株式会社の創業者であり、現役のプログラマ。経営理念は「テクノロジーによって顧客とパートナーに寄り添い、ウェブを良くする」。 プロフィール詳細へ