ディスレクシア入門ー「読み書きのLD」の子どもたちを支援する
公開日 : 2021-12-11 12:00:00
- この記事は やさしい日本語 Advent Calendar 2021 アイコン別ウィンドウで開きます の第11日目の記事です。
ディスレクシア入門ー「読み書きのLD」の子どもたちを支援する アイコン別ウィンドウで開きます Kindle版で読みました。
ディスレクシアとは「読み書きのLD(Learning Disabilities:学習障害)」という意味とされます。よく、その「見え方」について触れられることが多いと思っていましたが、その見え方は一様ではありません。
見え方の一例を理解するには、Google で画像検索してみると良いかもしれません。アイコン別ウィンドウで開きます
この本では、ディスクレシアの入門書であり、実際に子どもたちに対する学習支援などの具体的な方法にも触れられています。第7章は世代別に分かれています(「小学校低学年」「小学校高学年」「中学生・高校生」「中高生・大学生で特徴的な事例」)。
例えば小学校低学年では
知的な発達は問題がありませんから、学年相当の学習内容は理解できますし、興味もあります。しかし、読み(デコーディング)の問題があるので(中略) 文字で埋まっている頁は、手に取る意欲さえわかないということがあります。
※ デコーディング=(黙読なども含め)単語を音声に変換すること
そして、教材の工夫としては
- 漢字にふりがなをふる
- 文節ごとにスラッシュを入れるなどの補助
- 3行だけ見えるように厚紙をくり抜いたもの(リーディングスリットなど)を当てて行を飛ばして読まないようにする
子どもと相談しながら、読みやすいフォントや文字サイズで教材を打ち直す、などのことも行われているとのことです。ただ(この本には書かれていませんが)ルビについては、小さなルビが親文字に近いところにあるとかえって読みにくいとも聞きますし、学習過程でなければ、ないほうが読みやすいケースがあるかもしれません。
なお、分かち書きは高学年になってもあったほうが読みやすいとのことです。
また、タブレット端末の活用、読み上げソフト、プレゼンテーションソフトの利用など、ICTの活用を早くから教えていくなど、今の時代に即した内容も。
スクリーンリーダーと言えば、視覚障害者(や弱視の方)がもっぱら利用するものであると考える人が多いと思いますが、ディスクレシアの人にも有効な機能です(文字が読みにくいのだから)。MacのVoiceOverでは画像のように読み上げているテキストを表示する機能がありますが、このように少ない情報単位で文章を見せながら読み上げることが理解の助けになるのだと思います。
また、障害者差別解消法における「合理的配慮」について述べられており、例えば受験における配慮申請について紹介されています。ディスレクシアの子供を持つ親の方にとって役に立つとともに、サービス提供側についても学びとなるでしょう。
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さてやさしい日本語 Advent Calendar 2021 アイコン別ウィンドウで開きますの11日目の記事でありながら、やさしい日本語についてこの記事では触れられていません。「知的な発達は問題がありませんから、学年相当の学習内容は理解できますし、興味もあります。」とあるとおり、私は日本語自体を「やさしい日本語」にすることは、必ずしもディスクレシアの人に対して必要だとは思いません(学習過程では有効であろうと思います)。ただ、「文章を短くする(読むことが苦手なんだからテキスト量は少ないほうが当然良い)」「分かち書きをする」など、やさしい日本語化の際に必要ないくつかのことが有効なのだろうと思います。
ディスレクシアの方に対して、我々(Webコンテンツ制作者)ができることの実践として、ウェブサイト「やさにちウォッチ アイコン別ウィンドウで開きます」では以下の工夫をしています。ご感想や当事者の方のご意見などありましたら、ぜひお聞かせください。改善していきたいと思います。
- ふりがなをつける
- ふりがなの表示・非表示を切り替えられるようにする
- ふりがなの色を変える
- ふりがなを少し大きくし、親文字と距離をあける
- 分かち書きをする
- 分かち書きのあり・なしを切り替えられるようにする
- 行間を広くする
また、現在、UDフォントの採用を準備中です。