拡大するか成長するか、はたまたどっちも諦めるのか - 会社とこれまでのこと(5)
公開日 : 2009-10-04 15:00:00
アルファサード有限会社では現在人材を募集中です。広告(1)-東京(2)-大阪
既に今週5名程面接を予定しているので、そろそろ決めるかもしれませんが、引き続き書きます。今回は会社の拡大と成長について。
※当然ですが、あくまでも私の私見です。これが正解って押し付けるつもりはないし。
- 会社とこれまでのことを少し書いてみます。
- 面白いのは「技術」ではなく「技術の向けどころ」 - 会社とこれまでのこと(2)
- 大きいことより、強いこと、面白いことを優先する - スタートアップとお金の話 - 会社とこれまでのこと(3)
- ピンチと壁をどう乗り切るか - 会社とこれまでのこと(4)
現在Web業界? には玉石混合様々な会社があるわけですが、まず前提として弊社は「地方都市ひとりでスタートして現在6年目の小規模なWeb制作会社」です。
独立か会社設立か - 人を雇うこと前提か否か
こういう会社は結構あると思うんですが、Web制作系で独立とかこれから会社つくろうとしている人にまず考えてほしいなと思うのは、「独立」が目的なのか「会社」つくるのが目的なのか、どちらなのかってことです。
「ひとりではじめて仕事が増えたから人を増やしていく」ってのはありがちな気もするのですが、僕はこの考え方に反対です。だって結果次第の行き当たりばったりと言えなくもないでしょう? そこに先を見た計画や成長戦略はあるのかどうか。それがないとやがて行き詰まるんじゃないかな、と(実は結構そういうパターンが多いんじゃないだろうかって思ってる)。
自分が「スーパークリエーター」で、ある意味師弟関係的な何か(?)で人を雇って、っていうのはありだとは思うのですが、前提として会社が成長することを考えていない場合、若い人間を雇い入れたとして彼らの「次」をどう考えてるのか。自分ひとりで手が回らなくなったから、人をとりあえず入れる。若い人はいつまでも若くないのだから、彼らの力も年収もあげていかないといけない。彼らの「次」が、「力付けて独立したらいいじゃん」もしくは「給料上げたかったら自分で考えて力つけて自分で頑張れ」だったら、それ何の会社なのって思う。彼らが自分で成長できなかったら、そのうち若くて安い人間に入れ替えたくなってくるかもしれない。
ではその逆の例を考えてみます。僕の考えでも一般的な考え方でもないけど、あくまでも一例として挙げるけれど、例えば若いコーダーやデザイナーが経験積んで、経験積んだらディレクターになってコーダーやデザイナー使う側に回りなさいっていうパターンあるでしょう? これってどうでしょうか。
例えばディレクター、コーダー、デザイナーの3人編成がひとつのユニットだとして、当初1チーム、その後コーダー、デザイナーがそれぞれディレクターにステップアップして各ディレクターが2人ずつを抱えて3チームになりましたって例を考えてみましょう(わかります? あくまでも例ですよ)。これ、人が辞めていかない限り成長前提のキャリアアップですよね。どのくらいのスパンで、ってのにもよりますが。例えば5年でっていうことであれば5年で3倍に成長、ってことが前提です。
もし、たいして成長していないのにこのようなモデルの会社があったとしたら、それが成り立つ(成り立っているように見える)のは、それは人が辞めているからです。誰かが辞めていくことが前提の組織の成長なきキャリアアップモデルではないでしょうか。これってどうでしょう。
バイアウトや上場という、一つのゴール(本当のゴールではないけれど)がある会社はいいと思うんです。それがない会社で働く人は何を見て働けばいいのでしょうか?
「拡大」でなく「成長」指向
さて、いったい俺は何がいいたいんでしょう。要するに、(人材募集しておいて矛盾すること書くけれど)「大きくなる気あんまりない」ましてや「上場するとか考えてない」って公言しているウチみたいな会社は社員の今後とか、どのようにキャリアアップ、ステップアップしていくんだ、ってことを描いておかないといけないんじゃないかってことです。
それがないのに「忙しいから、仕事増えたから人入れたい」ってのは、入ってくる人間が不幸になると思うのです。
歴史も規模もある大きな会社とは違うのです。上が定年で辞めるとか天下りで他所にいって空いたポジションに下から上がっていって、そして新卒が入って、っていう会社ではない、ということです(まぁ、こういう大企業的モデルも限界きてる面もあるでしょうが)。
さてウチの話です。これまで色々試行錯誤はありましたが、以前と比較して人が定着してきた。ただし基本「大きくなる気(あまり)ない」のです。もちろん「誰か辞めること前提」のつもりありません。
こういう場合、現在のスタッフが年齢重ねていくのに比例して収入も上げていくために必要なことは「成長」し「収益力を上げる」しかありません。人数は増えないのに収入を上げていこうとするわけですから。
個人に依存しない「成長」を考える
もちろん、スキルアップして作業スピードをあげたり、デザインの付加価値をあげて同じ作業量を「より高く」売れるようにしていくってのはありますけど、競合もプロなんですから、例えばクリエイティブでそんなにわかりやすい付加価値、他社との違いって出るもんでしょうか? 以前勤めていた会社の社長が言ってました。「例えばコンペで、内容が明らかに上回る企画なんて一握りである。相手だってプロなんだよ。」
逆に、個々の人材が例えばデザインスキルとか実装スキルあげて収入アップさせていくってのは、もちろんその環境をつくるのも会社だし、受け皿となるのは会社かもしれませんが、個々のスキルってのは他社にいっても通用するスキルですから、彼らにとってウチの会社である必要もないでしょう。
あくまでも「ウチにいることで自分のスキル以上に良い仕事ができて、より大きな付加価値が生み出せる(収益をあげられる)」シナリオが必要だと思うのです。
弊社ではこの3年くらいかな? 人数同じで数字を上げていくことが出来ています。仕事はたしかにキツい面もあるでしょうが、3年前は現在より仕事してなかったってこともない。3年前より個々のスキルがめちゃくちゃあがったわけでもない(もちろんスキル上がってますよ。それは前提ですが、数字と比例するくらいあがってるわけじゃない)。
ひとつは前々回だったか、書いた「技術の向けどころを変えた」こと、ピンチを契機に「選択と集中を進めた」こと、「アウトプットを増やした」こと、その結果を受けて「組織をフラット化した」ことです。別の言い方をすれば「上流ではなく、下流のピンポイント」を狙って徹底し、「製品とサポートを売ることで、デジタルコピーが価値を生み出す」しくみをつくったことだと捉えています。その結果として現在があるのだと。
「役務の提供会社」から「技術、サービスとノウハウを売る会社」への転換
さて、当然ですが今がゴールではありません。常に次を考えて手を打っていかなければ継続的な成長は見込めません。それがビジネスの世界の掟ですよね。
次のフェイズは「役務の提供会社」から「技術、サービスとノウハウを売る会社」への転換です。何であんな人数のオフィスにあんなセミナールームと言うか大会議室をつくったのか、スクリーンリーダーを始め支援技術というか、購入しまくったのか、サーバーラックとかサーバーマシンとか一気に購入してインフラ充実させたのか、全部その布石です。「技術」を売るってのは、現在力を入れている関連製品の充実化がわかりやすいでしょう。「サービス」を売るってのは、SaaSとかASPとかインフラを含めて自社の技術を提供すること。「ノウハウ」を売るってのはセミナーみたいなわかりやすい展開もありますが、製品サポートとか、ウチが得意な部分を売っていくということです。
それを、どのようにやるのか、という具体的な施策の一つが今回の人材の募集なのです。スピードを落とさずに、マーケットが必要としているものを提供していくために、現在の体制とは違ったところでひとつチームを作りたい。ウチが今もっているものを素早く広く展開させて、今狙っているニッチなマーケットでシェアを獲得するということ。
人材募集+もうひとつ進めていることがあります。これもいずれ書くかもしれませんが(書かないかもしれませんが)、ひとつはパートナー作りとアライアンス、もうひとつは新たなビジネススキーマの開発です。
要するに現状での今期の戦略・施策3点ってことですね。
現在、「役務の提供会社」から「技術、サービスとノウハウを売る会社」へ転換するために(何のために)、チームづくり、パートナーづくり、ビジネススキーマの開発(どのように)をやってるんだ、ってことです。
じゃあその後はどうすんねん、ってことですが3年後どうするとか5年後どうするってのをここで書いたりはしません(ってか、書けない)。マーケットや自社のその時のポジションをちゃんと分析して、「もっと強くなれる部分はないか」「さらに結果を上げられる方法はないか」を考えて実行する。まだまだ成長して「強く」なれる余地はあるんだと考えています。そのためにはスキル磨くだけじゃなくて、常に変わっていかないといけないと思ってます。
さて終わりに。人も辞めずに拡大もしなければ、いずれ高齢化してまいます。そこを踏まえて「ゆるやかな拡大」ってのは当然考えています(今がMAXだって考えてはいません)。ただ、「意味のない拡大は破滅への序章」っていうときついですが、「意味のない採用は仲間を不幸にする」ってのはいつも考えておきたいし、そこを考えた上での今回の募集であるということを最後に書いておきたいと思います。