アルファサード株式会社 代表取締役 野田 純生のブログ


Sir Tim Berners-Lee 慶應義塾大学名誉博士称号授与式・記念講演会


公開日 : 2017-03-15 10:57:54


前日の記念祝賀会も含め、参加してきました。

私のブログを読む方には紹介するまでもないですが、一応。

Sir Tim Berners-Lee

記念講演会ですが、同時通訳を聞きながらメモをとりましたので共有します。追いついていない所、私の知識が追いついていないなどで誤っているところがあるとは思います。ですので、これは私が単に感じたこと、私自身が単に願っていることなのかもしれません。内容は抜粋です。

WWW誕生の話は書籍「Webの創成 ― World Wide Webはいかにして生まれどこに向かうのか」でも読むことができます。

※このテキストは非公式のものであり、誤りが含まれることがあります。

(抜粋テキストここから)

Tim Berners-Lee 記念講演 (抜粋)

私はこういう場で講演をするたびにまた一年が経過したな、と感じます。 25週年、28周年のときもそうでした。

我々は継続してきました。これからも停滞させない。 Webのない世界は考えられないところまできたと思います。 しかし、インターネットと言えども必ずしも永続すると考える訳にはいきません。

今日は皆さんに、レイヤーという話をしたいと思います。 例えばWifi、物理レイヤー=接続、有線無線に関わらず繋ぐことができます。

1969年、皆さんは何をしていましたか? 最初のパケットがネットワークを通過した時 コンピューターとコンピューターが繋がった(TCP/IP)。

今はクラウドの時代。データを投げ込めばやってくれる。 プラットフォームとは、基盤。

パケットを送れば向こうに任せてしまう、というところが素晴らしいアイデアであった。インターネットは差別がない(期待も込めて)。どんなアプリケーションでも。

期待も込めて、というのは競合排他のために回線を絞るとかするとかがなければ。

そして「ニュートラリティ」。 政治利用の問題も。アメリカなどで最近起こっていること。

インターネットはワンプラットフォームです。

WWWの誕生

1989年、CERNでプログラマをしていました。CRENは面白い場所です。色々な国の人達が集まっていて。物理学者も多いです。私もそうでした。

私はCERNでプログラミングをしていました。

みんなそれぞれ慣れたやり方があり、様々なOSも存在していた。私はWWWを任されていたわけではなありませんでした。

16ヶ月勤務して後に、これは必要だ。異なるコンピュータ、異なるOS、ドキュメントをどうすれば共有できるのか、それが実現できるのか。ハイパーテキストシステムが欲しかった。繋がってはいるのです。でも、いちいち聞かなきゃならないのです。OSも違うし使い方も違う。

もちろんネットワークはあったのだけど、どうやってログインするのか? 私はこれをWWWを開発する「言い訳」にしていました。すると、上司がやってみたらどうか、と。

NEXTがあったんです。スティーブジョブズが作った格好いいマシンがあったんですよ。NEXTを覚えている方いらっしゃいますか?

NEXTが格好良かった。いろんな格好良いものが詰まっていた。

すぐに電子メールが使える、開発機能が最初からあった。インターフェイスビルダー。プロダクト名を聞いてくるので「WWW」と入力した。少しハッキングしたんですが、うまく動きました。

NEXT自体は結局うまく行かなかったのですが、開発機、今ならOS Xを走らせて、開発する。当時からNEXTにはそれがあったのです。

このプロジェクトは「曖昧だけど面白い」という評価を受けました。

私は、誰かが何か面白いプロジェクトをやっていて、それが面白いと思ったら、やらせてあげてはどうかと思います。

WWWを閲覧するだけでなく、エディタも作りました。リンクを作る。

CERNのネットワークにはポートナンバーがありました。私は274(私の両親の電話番号)をポートナンバーにしてプロジェクトを始めました。色んな人が色んなポートナンバーでプロジェクトをやっていました。

それは1989年のことでした。 1994年に私はMITに移り、W3Cを作り、やがて慶應が参加しました。

WWWの今とこれから

今や、Webを使っている人は50%。28年の間にはいろんなことがありました。

さて、道行く人に訪ねたら、例えばFacebook、それがWeb。

SNSも一つのレイヤーです。本来のwebはオープンなのですが、FacebookもTwitterも集中型、Googleもそう。巨大なセンター、データベース、集中、集約化されている。分散化が良いところでエキサイティングだったのに。

Facebookの友達とか、Linked Inの同僚も、そうですよね? Facebookの友達とTwitterのフォローは同じじゃないですよね。SNSは分散型ではない。

オープンなwebを維持しつつ、SNSではない、オルタナティブなプロジェクト、MITでもやっていますが。

昔はフロッピーディスクさえあればそこにデータがあることがわかった、自由だった。でも今は違う。どこに個人情報があるかわからない。

ネガティブに聞こえるかもしれませんが、間違った方向に疑問を呈することは間違ってはいないと思います。

インターネットレイヤーとwebの間に国が介入してくる。例えば英国。半年間、誰が何をクリックしたか。私が「癌」を調べたら、誰かがそれを知っている。例えば保険に入れないかもしれない。スパイ活動、ブロッキングなど。

個人情報の悪用、マネタイジングに利用しているかもしれない。

Twitterはもはやニュートラルなメディアではないですよね。リツイートという機能がありますよね。拡散する。アイデアをネットワーク上で拡散する。でも、ネガティブなツイートのほうが10倍だという。

人間とテクノロジーがつながっている。ノードは、人ですよね。新しいSNSを作るのであれば、人と人をつなぐもの。Twitterも、もっとデータを見ていって欲しいですよね。差別的な発言、悪意のほうが拡散しやすいのではないか。選挙戦のときもフェイクニュースとか。Webが収入につながるかもしれない、だからクリックを稼ぐために過激な発言をするとか。広告システムは人をトレーニングしている。まったく商用の目的で動いている。アメリカの総選挙で起こったこと。クリックしてほしいからTweetする。お金に動かされている。GoogleのAd、Facebook広告。ターゲット広告は確かに有効です。 ケンブリッジによると、人々を32のターゲットに分けてグループ化したのだそうです。ターゲット毎に有効な広告を配信した。これは倫理的なのでしょうか? 人によって伝えることが違う。ターゲット広告はまったく違うことを違う人に言うことができる。これは正しいことなんでしょうか?

私は、webの全体像に可視性がないことが懸念でした。全体のシステムの安定性。

多角的な物の見方をしましょう。単に急行列車に乗るだけではだめなんです。速く速く進もうというだけではだめ。スピードだけではだめ。どんな情報が使えるのか。今やWikipediaには情報が溢れています。

Webサイエンスが面白いのはマイクロスコープ、ある人が何かをクリックして何かを買う。 オンラインが暴力的になること、意地悪な人、どういったパラメーターでこれを変えていけるのか。AをBに変える。

Twitterは警告を出して、誤っていないか、悪意がないかを見ることはできないのか。そういう方向もありではないのでしょうか。インテリジェンスを使ってシステムを見ていくべきではないかと思います。 SNSによって起こっているディスカッションが人類のために役立っているのか。

これは、すべての人のためのもの

しかし、私は前向きに楽観的に考えていきたい。
Web上に国境はありません。

皆さんには次のレイヤーのことを考えていただきたいのです。

ネットの中立性、スパイ行為と戦う、webをオープンにし続けるために取り組まなければなりません。

ロンドンオリンピックに出た時、何を話そうかと思ったのですが、私は(ここだけ日本語で)「これは、すべての人のためのものです」と言いました。

私の話は以上です。

(抜粋テキストここまで)

This is for Everyone

その、ロンドンオリンピックの動画はこちらに。写っているのはNEXTのようです。

ひとことだけ感想

リーダーというのは、楽観的かつ悲観的に振る舞うものなんだな、と。いずれにしても、WWWがあるおかげで今の自分や会社が存在するということに感謝。



このブログを書いている人
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野田 純生 (のだ すみお)

大阪府出身。ウェブアクセシビリティエバンジェリスト。 アルファサード株式会社の代表取締役社長であり、現役のプログラマ。経営理念は「テクノロジーによって顧客とパートナーに寄り添い、ウェブを良くする」。 プロフィール詳細へ