そろそろ「もう、MTでいいじゃん」についてひとこと。
公開日 : 2009-07-07 12:07:52
言っておく。
6月27日に行われたCSS Nite LP6にショートプレゼンとパネルディスカッションに参加した時にボソっと発したあの発言について。
あの発言は特に事前に用意していたわけではなくて、当日の各セッションを聞いていて「ああ、もういいじゃん」的な気持ちになったから自然と出て来たということを最初に白状しておきます。例のごとくスライドは途中で少し書き換えたけど。
CSS Niteというイベントの性質上、制作方が多いわけです。で、CMSベンダーというか開発者(でない方もいましたが)がプレゼンする。鷹野さんはイベント前から「MT代替、もうMTじゃなくていいじゃん」全開だったわけですが、蓋を明けてみるとそのあたりが響いて来ない。何故なんだろう? というのを中小規模「制作会社」の社長的に少しだけ考えてみたい。
「もう、MTでいいじゃん」
“反”MTの空気の中で(実はそうでもなかったけど)登場したMT陣営側としては、「MTでええやんけ」って関西弁で言っても良かったわけですが、あれは「気怠く(けだるく)」ボソっと言うのがポイントなんだ。だって僕の登場は最後だからいい加減疲れてるじゃない。そこに大阪のヲっさんが「MTでええやん」とか言ったら(関西弁がキツく感じられるってのもあるし)反感買うもの。だから、参加者目線(そろそろ疲れたよな...これっていう決めてもなかったし...)で半ばあの場の空気を代弁するように言ったのです。
「ぶっちゃけ。 そのCMSで儲かんの?」
スライドの最後に一枚、この台詞挿みました。だって制作会社的にはそうじゃないの? 「儲かる」には色々あるんだけど、
- 制作者に使いやすい(構築しやすく扱いやすい)
- エンドユーザーに使いやすい(顧客満足が得られやすい)
これについては、各セッションで皆強調していた。
- 学習コスト(習得コスト)が低い
これもSOY CMSやa-blog CMSで強調されていた。ただし...
ぶっちゃけ。 何だかんだいっても 今までに身につけたスキルが 活かせた方が幸せじゃね? (人間だもの)
をひっくり返すだけのものになっていただろうか? 既に習得して使ったことがあるというだけで、学習コストは低い(初期の学習コストではないですよ。相対的な意味でのコスト)。
- (あらゆる意味で)コストが低い
もう少し広げてみる。コストってのはCMSのライセンス料? いや、それだけではない筈。学習コストもそうだけど例えば人材調達コスト。普及しているものであれば、MTML分かる人募集、ってスタッフ募集でなくともアウトソース先でも調達コストが低いわけで。
- 投資コストをどれだけ回収できるか
既にマーケットが存在してお金に繋がるプラットフォームは制作者にとって魅力なわけです。「このCMSで構築しようと思う。さて業者を探そう」ってなマーケットがあるかどうか。
そのCMSは3年後も“その”CMSで居続けられるのか?
でも実は一番大切なのは「どれだけの期間に渡って投資コストが回収できるか」なんですね。端的に言えば、何年先までそのCMSは存在するか?
OSSのCMSなんか、星の数ほどあるわけです。ところが、メンテナンスされなくなって放置されたあるいは頓挫したあるいは開発者が他へ行ってしまったCMSも沢山ある。
この日紹介されたCMSのどれだけが3年後/5年度アクティブにメンテナンスされ、継続して使われているのか? そこを判断しないと制作者(会社)としては投資できないのです。ひとつのサイトを構築する際の選択肢であればまだいいのですが、それでも数年後サポートされなくなったCMSであれば、メンテナンスコスト等はバカにならんわけですよね。
OSSだったら自分たちで手を入れればいいじゃん? であれば、自分たちがソースを理解したり扱いやすくてってのが採用の理由になる。それは決して機能や性能の話じゃない。
失礼を承知で書くけど、例えばそのCMSでメシが食えなくなって、別展開してる事業やサービスが当たったことで会社としてCMSやめてそっちに「選択・集中」しますって無いと言える? (別に喧嘩売ってるわけじゃなくて、「俺たちはこのCMSにかけていて、こんなビジョンを持っていてこういう姿に育てたい」ってのをアピールすべきったんじゃないかな? ってこと。機能やコンセプト・思想だけじゃなくてさ。僕ならそうする)
これでちゃんと収益上げてるよ、ってのも大切なメッセージでもあるのだと思う。これだけ導入いただいたし、今後もこの製品育てて行きますよ! ってのは、安心してそのプラットフォームに飛び込める一つの要素でしょう? (だから、各CMSのセッションでやたら有償だけど...とか、安くないけど...って申し訳なさそうに言ってるのを聞くと逆にイライラしたんだ。対価をいただけないと継続できないのだから*)
*既にコミュニティが育っているOSSは別ですよ。念のため。
売りは「サポート」の真意*
*パネルディスカッションでの「ウリをひと言で」に対するウチの回答
過去に行われたこのへんのイベントの2次会とかで僕と話をした人は記憶していると思うのですが「これ(Power CMS)売らないの?」って沢山聞かれて(俺)「だって、サポート大変だもの」って言ってましたよね? つまり、当時からこの製品は「サポート必須であるCMS」であることを分かっていたわけです。
MT4で強化された機能に加えて。マニュアルにして150ページ分の機能。MTだけでもサポートが求められてることは様々な情報から判断できる(例えばmixiのMTコミュだって「こんなこと出来ますかあんなこと出来ませんか?」で一杯だ)。
そんな意識が前提だから、価格を決める時に考えたのは「この値段ならどれだけ売れるか」ではなくて「どれだけもらえば十分にサポートできるか」なのです。
ウチのは「高い」とも「安い」とも言われるけど、僕は決して安くして沢山売りたいとは思いません。サポートで1人のお客さまのところで発生した問題の向こうには100のサイト、数百人のユーザーがいる。何かあったらそのすべてのお客さんをサポート可能なのか? また、サポートこそが製品開発・改良のヒントだと考えていること。現場で出来たCMSが売りなのだから、現場に近いところ(サポート現場)こそ重要なのです。
一方、CMSってのは製品だけですべてが解決する種類のものではありません。CMSの上にテンプレートを載せて、デザインを載せてコンテンツを投入する。これら全部ひっくるめてサイト構築です。そこに人の手が入る限りサポートの機会やサポートが役に立てる余地は沢山あります。
実はあのイベントの前日、6月末ということで全社会議がありました。木曜日の夜にスタッフたちと飲んでいる時に問いかけてみたのですね「ウチの売りは何だ?」。みんな機能とか色々言ってた。あの日、他のCMSの方々が言ってたようなことです。「MTとPower CMS でも出来るって、それ」みたいなことを。
でも、僕は言ったのです。「違うよ。」
「俺たちはサポートを売ってるんだ」
サポートには、製品導入後の製品サポートもありますが、受注のためのコンペの提案書作成のための素材提供や打合せ・ブレスト・企画書作成や見積もり等のサポートもあります。導入いただいた方が実現できないで困っていることを(場合によっては有償で)解決するようなサポートもあります。ウチはそこで勝負する。
また、この価格設定だからこそ受注前に「デモ見せに来てくれないですか?」「デモ環境用意してもらえないですか?」「この機能要件書に○×とコメント入れてもらえませんか?」に対応できます。
CMSそのもので見ればMTの「コア」はオープンソースです。MTという製品やシックス・アパートさんがこれからどうなるか、っていう話の反面、MTを本当に熟知していれば自分たちもサポートできるじゃないかっていう考えもあります。
アルファサードはこの6月末に第6期末を迎えました。おかげさまでPower CMS for MT 100サイト導入も達成しましたし、利益も出せました。だから、ウチはこれからもこの製品、継続して取り組んで行きます(それも僕たちのサポートのひとつです)