Movable Typeのオープンソース化が意味するもの。
公開日 : 2007-06-08 01:09:54
引き続き、MTのオープンソースライセンスについて。
対WordPress?
WordPressのシェアがどうだからというのは本質ではないと思う。どっちにしてもそのあたりの憶測は誰かが書くだろうから僕は書かない。
Perlコミュニティへの貢献。
CPANにmt/lib/MT以下のモジュールが一気にUPされるのである。追記:CPAN云々の件は認識がちょっと違うのかな...という気がしていますが、いずれにしてもPerlでの開発に有効に使えるGPLライセンスのライブラリ群が出来ることには違いないでしょう。PerlでのWeb系の開発だけならMT::Utilだけでも自由に使えることに分かりやすい意味がある。
何せ、MT::Utilだけでこれだけある。
@EXPORT_OK = qw( start_end_day start_end_week start_end_month
start_end_period week2ymd munge_comment
html_text_transform encode_html decode_html
iso2ts ts2iso offset_time offset_time_list first_n_words
archive_file_for format_ts dirify remove_html
days_in wday_from_ts encode_js get_entry spam_protect
is_valid_email encode_php encode_url decode_url encode_xml
decode_xml is_valid_url discover_tb convert_high_ascii
mark_odd_rows dsa_verify perl_sha1_digest relative_date
perl_sha1_digest_hex dec2bin bin2dec xliterate_utf8
start_background_task launch_background_tasks substr_wref
extract_urls extract_domain extract_domains is_valid_date
epoch2ts ts2epoch escape_unicode unescape_unicode
sax_parser);
DBIについては後述するが、MTというのはつまりPerlベースの高機能テンプレートエンジンであり、開発プラットフォームなのだ。そして何よりMTをベースとして開発する以上、Webデザイナーとのスムーズな協業が可能になる。何しろ「テンプレート・タグ」をWebデザイナーがテンプレート・タグを理解している唯一! のテンプレートエンジンなのだから。
MTのラインナップとSixApart社のビジネス展開。
オープンソース版と商業ライセンス、そしてもう一つラインアップがある。Movable Type Enterprise である。
CMS製品として考えると、Movable Type は非力な部分はあるが圧倒的に安い。3万円が5万円になっても安い。但し、個人向けライセンスと商用ライセンスを用意している時点で、且つ厳しいアクティベーションによるライセンス管理をしていない(様々な理由からできない)現状では、Movable Type の商用ライセンスというのはいかにも半端な価格設定なのだと思う。
ログインすると「Movable Typeニュース」が画面の右上に表示される、ということはSIxApart社には実際のユーザー数がログ等から分かるのだ。これは想像でしかないけれど、アクセスログから見るユーザー数と実際に登録しライセンス料金を払っているユーザー数の間には大きな開きがあるだろう。
であればMovable Typeのライセンス収入は考えずに(実際は様子見だろう。3万円から5万円の値上げ、彼ら自身もドキドキしながら反応を伺っているに違いない)、Enterpriseに注力していくのは当然だろう。CMS製品としては決して高く無い商品なのだから。そして実際にリリースやProNETミーティング等で感じるのはEnterprise版への力の入れようである。
おそらく、オープンソース版から得たものもEnterpriseに活かされていく筈であり、当然そういった期待を持っているだろう(それはすごく真っ当なことであり、全面的に賛同する。僕もそうするだろう)。
MTコミュニティのMovable Typeへの貢献。
個人的にはMT3.3をオープンソース化して欲しいと思う。それは無理だと思う。何故なら、SIxApart社の側にメリットが殆どないからだ。 (彼らにとってはセキュリティホールや脆弱性が発見された時の負荷を軽減できるな。誰かが修正してくれるだろうから。誰もいなけりゃ僕が修正するよ。)
数多くのプラグインプログラムがMTを魅力化した一因であることは確かだろう。そしてそれはコミュニティの貢献に他ならない。だからこそこれだけエネルギーをつぎ込んだMTに対する思い入れやこれまでにソースを読み、時にはハックして作成したプラグインがアーキテクトの変更によって使えなくなるのは正直辛いものがある。
だからといて今回リリースのMT4系がコミュニティと隔離されては(SixApart社にとっては)無意味なのだ。コミュニティから得るものがなくなってしまうから。
SixApart社のリリースが建前で対WordPressだけを考えているのであればMT3系をオープンソース化すれば良い。建前でなく、本当にユーザーやコミュニティと共に進歩していきたいのであればオープンソース化するのはMT4である。コミュニティもアーキテクトの変更に伴う痛み(やエネルギー)を共有すれば良いのである。
(追記)
GPLにしたことで、MTOS向けに開発されたGPLである成果は商用のライセンスやエンタープライズに取り込むことは難しいのだと思う。例えばプラグインがデュアルライセンスとかでリリースされたら別だけど。
プラットフォームとしてのMT。
PerlモジュールとしてのMTの本質的な部分はDBIをとにかく分かりやすく、DBの種類を意識せず(これは移植性にもつながる)開発出来るしくみを持っていることだろう。
MySQL, PostgreSQL, SQLite...MT4に至ってはOracleもMsSQLServerに対しても違いを意識せずに書くことができるのだから。
例えば、ログイン機能付きのWebアプリケーションやWebサービスを作るにあたって、ログイン、ユーザー管理が標準で準備されているMTを使えばスクラッチで開発することと比較して圧倒的に有利だろう。実際、Blog, CMSとして使わないのにMTをプラットフォームとして使いたいケースが多々ある。しかも、これまで気にしながらやってきたユーザー数によるライセンスコストの縛りがなくなるのだ。
※ プラットフォームとしてのMTについては、こちらも参照
Web制作者への影響。
すべてはここまでに書いたことの繰り返しになるが、手っ取り早い開発プラットフォームとWebデザイナーが理解済みのテンプレートエンジンを手に入れることができることには大きな意味がある。
また、商用CMSの価格の高さと(これまでの)オープンソースプロジェクトの隙間を埋める存在になるだろうし、制作者はそのあたりの「隙間」をビジネスにしていくことだろうと思う。
とにかく、僕は歓迎である。MT4に対しても出来る限りのフィードバックをしていきたいと思う。