スローコミュニケーション わかりやすい文章 わかちあう文化
公開日 : 2021-12-09 19:00:00
- この記事は やさしい日本語 Advent Calendar 2021 アイコン別ウィンドウで開きます の第9日目の記事です。
スローコミュニケーション わかりやすい文章 わかちあう文化 アイコン別ウィンドウで開きます 読みました。
実は、私は一度だけ著者の野澤和弘さんとお会いしたことがあります。2018年2月17日、18日に行なわれた 「〈やさしい日本語〉と多文化共生」シンポジウム アイコン別ウィンドウで開きます に参加したときに、スローコミュニケーションさんのワークショップに参加したのです。このときはNHKの「バリバラ」も取材に来ていました。私がやさしい日本語の説明をするときに例に出す「大谷翔平は甘く入ったスライダーを右へ運んだ。」という例文は、その時野澤さんに教えてもらったものです(書籍にもこの例が書いてあります)。
野澤さんは元毎日新聞の論説委員で、社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会が1996年から2014年までに刊行していた、知的障害者向けの機関誌「みんなが読める新聞『ステージ』」の制作に携わっておられた方です。私の印象は、とても穏やかで紳士的な方で、実際参加したワークショップでも物腰の柔らかい話しぶりでした。 ただ、書籍は冒頭からなかなかに厳しく強いメッセージで始まっています。のっけから「事件の現場で」、放火で逮捕された知的障害者・56歳の男性の裁判や取り調べの話です。
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少し長くなりますが、冒頭の「はじめに」から。
抽象的な概念や難しい専門用語は障害者にとっては理解を妨げる最大のバリアーだ。
障害者に対する情報保障といえば、目の不自由な人への展示や音声読み上げソフトの提供、耳の聞こえない人へ手話や要約筆記を用意することだと考えられてきた。
(中略)
最近はALS(筋萎縮性側索硬化症)で寝たきりになっても、文字キーボードを使ったり、まぶたや唇の動きをヘルパーが読み取ることによってコミュニケーションができることも知られるようになった。
そうした状況の変化を見るにつけ、知的障害者だけ置き去りにされているように思えてならない。それでも漢字にルビを付けるなどの配慮も見られるのではないかと言う人もいるだろう。
しかし、ルビを振る程度では十分な情報保障とは言えない。
スローコミュニケーションさんのウェブサイトの「わかりやすいニュース」アイコン別ウィンドウで開きます ですが、毎週新しいコンテンツが掲載されています。このサイト、NHKの「NEWS WEB EASY」アイコン別ウィンドウで開きます と似ていると思いませんか?
- 記事の情報量を少なく
- 一文を短く
- すべての漢字にはふりがな
- ページの読み上げ音声の添付
「わかりやすいニュース」のほうが、改行が多く、句読点や、文の区切りで繰り返し改行しているところが異なります。「やさしい日本語」といえば、「外国人向け」という文脈で語られることが多いのですが、知的障害者への情報保障、この書籍で言うところの「意思決定支援」にやさしい日本語ができることがある、ということを書籍、ワークショップでも教わりました。
だいたい、「合理的配慮」なんて言葉が、知的障害者に伝わると思ってるの? という問題提起でもあります。すべての人に知ってほしいですが、特に、アクセシビリティや障害者差別解消法に対して取り組んでいる人は、一読してほしいと思います。