アルファサード株式会社 代表取締役 野田 純生のブログ


そろそろGoogleストリートビューにひとこと言っておくか。


公開日 : 2008-08-09 13:25:42


Google の中の人へ

Googleストーリービュー、便利で大変面白いのですが、私の住んでいる街が撮影されておらず残念に思います。大阪市内ですから対象範囲地域でもないでしょうし。一度ご検討いただけませんか。

ただし、車で街に入るには許可証が必要です。警察署で通行目的を添えて申請し、許可証を発行してもらってください。


本気で書いたわけではありませんが、僕の住む街が撮影されていないのは事実です。通行には許可証が必要なので、勝手に車で入ることはできません。歩行者は勝手に入れますから、撮影は可能です。撮影してたらどんな目で見られるかは分かりませんけど。

日本の都市生活者のモラル

「公道からの風景だから公開を前提としているはずだ」ではなくて、「公道を通る者はその鼻先の生活空間はのぞき込んではいけない」というのが、日本の都市生活者のモラルなんです。

僕にはこの感覚はわかるし理解できます。これは法的な問題ではなくモラルの問題。モラルの低下は法的な問題を引き起こしやすくするかもしれません。

都市でなく田舎ならどうか

日本の田舎の場合、こんなもんですみません。「どこそこの路地で○○さんとこの旦那と△△さんとこの嫁が一緒に映っとるで」ってのはアレゲですが、田舎の場合は情報が広まるスピードにおいてネットよりリアルの方が凄まじいってもんです。

女性の視点

ここ数日色んな人とこのサービスの話をしていたけれど、Googleストリートビューの件を話題にした時、全体的に女性(特に一人暮らしの女性)が嫌悪感を持つ割合が多いように思います。

「モト彼(女)」の家、見ちゃったよ」と言ってる同僚がいてドン引きしちゃった女性とか(実際に聞いた話)、ネット上でのそんな書き込みとか見た時にすごく嫌な気分になったとか。

嘘だと思うなら、一人暮らしの女の子と一緒にGoogleストリートビューを見て、ベランダの洗濯物表示して「これ絶対女性の一人暮らしだよね」とか言ってごらん。気味悪がられる事間違いなし(瞬間的に気味悪がられるのはGoogleではなくてあなただけどね)。

例えば何らかのきっかけで異性の住所を知った人が家を確かめに行ったり待ち伏せしたりする行為とGoogleMapで住所を調べ、ストリートビューで「あぁ、ここに住んでるのか」という行為では、後者の方が圧倒的に行動に移しやすい(行動コストとリスクの問題、つまり実行しやすくバレにくいから)。

それが犯罪につながるかどうかは全く別の問題として、それを「嫌」と感じる女性は多いのではないかと思います(統計とってないけど)。

ネットのコミュニティはどちらかと言えば男性中心社会でしょうから、そういった女性の声は目立ちにくいという面もあるでしょうし。

親の視点

一方、自分の家の近所を見ていて、小学生くらいの自分の子供とわかる姿がくっきり映っていたとしたらどうでしょう。あの程度のぼかしであれば自分の子供の判別等簡単につくでしょう。これも法的にどうとかいう問題でなくて、映っているという事実について違和感というか嫌悪感のような感情が生まれるかもしれません(僕はやはり何となく嫌な感じになるだろうと思います)。

決定権を住民が持つ街

さて、冒頭の話に戻ります。僕が住んでいるのは大阪の南港ポートタウンというところです。この街は今となっては既に新しい街ではありませんが、当時としては進んだコンセプトで造られたのではないかと思っています。例えば電線が地中化されて電柱がない、とか。 大きな特徴のひとつに、車の通行には許可証が必要という点があります。車はそのまま入れない。だから街の中を走っているのはスーパーやコンビニに商品を搬入するトラックとか、深夜のタクシーとか、せいぜいがそんなもんです。
子供たちは比較的小さな年齢の時から交通事故等を気にすることなく伸び伸び遊べますし、街に緑が多くて環境も良い。少々不便(地下鉄中央線が伸びてからはさほど不便は感じませんが)なことをのぞけば、僕は概ねこの街が気に入っています。

許可をとった車両しか入れないわけですから荷物運ぶときなんかは警察で許可をとるわけです。理由が「Googleストリートビューの撮影」だったら警察は許可を出すのでしょうか? もしくは住民に諮るのでしょうか?

理事会の議題に「Googleストリートビューの撮影の許可について」ってのがあがったらどういう結果になると思いますか?

私見ですけど、住民に諮るとしたら、住民の多くは反対しそうな気がします。 もし本当に住民の多くが反対するのだとしたら、(少なくとも生活道路における) Googleストリートビューって果たしてどうなの?

大阪市内なのにGoogleストーリービューの対象外の街に住んでいるからこそ、そんな風に考えてみました。

撮影の許可は住民が決定権を持っていて、拒否する事も出来る=プライバシーに関する自衛が可能)という街の作り自体が価値になる時代になるのかもしれません。南港ポートタウンのコンセプト考えた時代にそんなこと考えてなかったでしょうけど。


追記:
感覚としては、このくらい (外周道路は見えるけど街の中は見えない) がちょうど良いバランスだと感じるわけです。ただし南港ポートタウンのようにはっきりとわかりやすく境界が別れている場所は希有なので、要するに「可能なものはすべて」ではなく「どこまでやるか」の線を引くことを考えてみてはどうでしょうか。

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このブログを書いている人
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野田 純生 (のだ すみお)

大阪府出身。ウェブアクセシビリティエバンジェリスト。 アルファサード株式会社の代表取締役社長であり、現役のプログラマ。経営理念は「テクノロジーによって顧客とパートナーに寄り添い、ウェブを良くする」。 プロフィール詳細へ