アルファサード株式会社 代表取締役 野田 純生のブログ


本当は見たくなかった。


公開日 : 2007-06-21 15:33:24


ニュースを見てこんなに腹が立ったのは久しぶりです。このソフトは、明らかな害悪だと思います。

以前からOne Point WallなどのWinny対策製品を販売しているネットエージェント社が、「Winny特別調査員2」という製品を発表しました*1。以下は、ネットエージェント社のサイトに掲載されている、この製品の特徴です。

紹介というか、言及されているのは以下のソフトについてらしい。

Winny特別調査員2は、「調査員CD」を会社が従業員に配布し、従業員が自宅のPCにCD-ROMをセットすることで、会社関係のファイルを自動的に見つけ出し、ファイル回収専用サーバにそのファイルをアップロードします。また、自宅PCからはファイル復旧ソフトを使っても、ファイルが復活されないよう完全に削除します。

僕は法律の専門家ではないから法的なことに関するコメントは差し控える。

プライバシーの件についても思うところはあるが、僕がひっかかったのはどうやって仕事関連の書類であるかを判断するか、そのアルゴリズムについてである。まさか単なるキーワードのマッチングだけじゃあるまい。
いくらキーワードを登録するのが調査をする側だとはいえ「間違ったファイルがアップされたり消去されたら、返却すれば良い」問題だろうか?

検索のアルゴリズムについてはサイト上では触れられていないようだ(どこかに書いてありますか?)。この部分の設計と開発はとても難しい筈だ。検索エンジンの検索結果が気に入らなければ舌打ちをすれば済むが、この手のプログラムが意図しないファイルをひっかけてしまったら舌打ちでは済まない。

意図しないファイルをヒットさせてしまったら色んな意味で不幸である(もちろんヒットして欲しいものがヒットしなければ何の意味もないわけだが)。

何も社員や下請け事業者だけじゃなく、調査を実施した会社も不幸になりかねないと思う。


実はここからが本題だったりする...

仮にヒットした書類が優秀な社員の職務経歴書と履歴書、他社への転職のための応募資料だったらどうだ。会社のPCならともかく、個人所有のPCである。応募書類には(もちろん職務規程に反しない範囲で)仕事上のことや会社名が書いてあるだろう。そしてそれは個人の自由である筈だ。

「しょくぎょうせんたくのじゆう〜 ぁはは〜ん」(古っ!)

会社側はファイルを開かずにそれが何かを判断できるのだろうか? 収集されたファイルは開くのだろう。

こうなったらもうお互い不幸である。警察の書類に名前を書かれていた女優さんも不幸だが(真偽は不明というか僕には分かりませんが)、「見たくなかった」けど見てしまったあなたはどうするのだろうか。まさか「応募書類見たぞ。ちょっと考え直してくれないかね」なんて言えますか?

恋人の携帯電話をチェックすることで不幸になるのは覗かれた方だけではないのだ。


追記:
ファイルを持ち出されるのが嫌、あるいは流出が怖いのであれば既にいくつかのソリューションがある。目先を変えたいのはわからないでもないが、このアプローチはどうなのだろう、というか「調査員」というネーミングにも違和感を感じる。


ところで、無印吉澤さんのページではウチの会社がコーディングしたページも引用されていて世間は狭い(<違)と感じましたというのは全くの余談。

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野田 純生 (のだ すみお)

大阪府出身。ウェブアクセシビリティエバンジェリスト。 アルファサード株式会社の代表取締役社長であり、現役のプログラマ。経営理念は「テクノロジーによって顧客とパートナーに寄り添い、ウェブを良くする」。 プロフィール詳細へ