アルファサード株式会社 代表取締役 野田 純生のブログ


スクリーンリーダー利用者に対しての「やさしい日本語」を考える


公開日 : 2021-12-07 19:00:00


『「ひらがな」で話す技術』という本を読みまして、色々と発見がありました。

ひらがなで話す技術 - 本の表紙
著者の西任暁子(にしとあきこ) さんは DJなので、「話し方」についての言及はまぁスクリーンリーダーとは直接関係ないのですが、「人は“ひらがな”で話を聞いている」という考え方には大いなるヒントがありました。

目で見てわかりやすい言葉と耳で聞いてわかりやすい言葉は、同じではないのです。

「こ」「う」「か」と聞いているあなたは「どこで終わるのかな?」と声を聞きながら終わりを探し始めます。
「こ」「う」「か」ときて「〜てき」と続けば「効果的」ですし、「〜んする」で終われば「交換する」かもしれません。
「こ」「う」「か」と、それに続く全ての音を聞き終えて初めて、それがどういう単語なのかがわかるのです。

以下の例に至っては、全て同じ音に変換されます(発音は異なるかもしれません)。

  • 校歌があります。(学校の歌)
  • 効果があります。(望ましい結果)
  • 高架があります。(橋・橋梁・高い道路や線路)
  • 硬貨があります。(コイン、お金)
  • 工科があります。(工学部)

主語によってコンテキストによって判断はできる、と言えばそうですが、

学校には校歌があります。

は、歌なのか、望ましい結果なのか、工学部なのか、判断つかない、もしくは判断ついたとしても、迷うことがありますよね。

「こうか」には他に

  • 高価 (値段が高い)
  • 降下 (降りる)
  • 硬化 (硬くなる)
  • 考課 (成績の評価)

などがあります。

そう、まさしくこれは「できるけど疲れる」の一例であって、ツイートは「発達障害の人には」って書いてますけど、視覚障害者や聴覚障害者には「わかるけど疲れる」、ディスレクシアの人には「読めるけど疲れる」といったことが日常的にあるのだと思います。

ちなみに、おそらくですが、「ひらがなで話す」ということから、テキストをベタな全てひらがなで表現すると、余計にわかりにくくなることが多いです。

そこで効果を発揮するのが、分かち書きと句読点です。

やさしいにほんご

が、「やさしいに」「ほんご」に分割されてしまうことについては、別の記事で触れました。

やさしい にほんご

というように分割していれば、「やさしい」は辞書にありますので、このようなことは防ぐことができます。

「鯛」「ことば」「ち」

何のことかわかんないと思いますが、ディスレクシアの人の講演録を読んでこのようなことを知りました(たいことばち、というテキストに対しての解釈についてです)。

 これは小学校の3年生の時ですが、音楽班にいました。音楽の授業の準備をする担当だったんですけれど、先生が、休み時間に、こういうメモをくれました。 私は前から順番に意味のまとまりを見つけようと頑張ったのですが、どういう風に読んだかというと、「たい」「ことば」「ち」…と分けてしまって、今日の給食は「鯛」?「ことば」は図書室かな、「ち」は理科室かな、保健室かなぁ・・・こっちから行った方が早いかな・・・などと思っていたら、音楽の始まる時間になってしまった。「ほんとになにやらしても使えんこだねぇ」としかられました。

「ひらがなだけ」だと、言葉のまとまりが分かりにくいのです。小学校3年生なので、ひらがなが多くなるわけですが、「音を言葉のまとまりに変換できて、意味を理解する」のは逆に難しく感じました。

本題とちょっとずれてしまいましたが改めて「目で見てわかりやすい言葉と耳で聞いてわかりやすい言葉は、同じではない」のですね。

やさしい日本語では漢語より和語を使え、の真意

漢語には「同音異義語」が多いです。そして、その単語がズバリ理解できなければそこはチンプンカンプンです。
でもまぁテキストの場合は機械翻訳にかけることで漢語の場合は単語と翻訳結果が 1対1 なので、相性は悪くないと思います。

答えが出たようで出ていませんけど、「聞いて分かりやすい日本語」を意識して書けば、スクリーンリーダー利用者に対しての「やさしい日本語」になるのではないか、と思うのです。思いました。

追記 : 漢語ではなく和語を使う、同音異義語を避ける、のは「ポケトーク」に話しかけるときにも有効です。医者に聞いた話ですが「注射」が「parking」に訳されたことがあるそうです。



このブログを書いている人
野田純生の写真
野田 純生 (のだ すみお)

大阪府出身。ウェブアクセシビリティエバンジェリスト。 アルファサード株式会社の代表取締役社長であり、現役のプログラマ。経営理念は「テクノロジーによって顧客とパートナーに寄り添い、ウェブを良くする」。 プロフィール詳細へ