アルファサード株式会社 代表取締役 野田 純生のブログ


10年という年月をどう捉えるか


公開日 : 2017-12-05 16:40:00


今年の11月、アルファサードのPowerCMSが10周年を迎えたこと、次期バージョンの開発を進めていることもあり、12月1日にPowerCMS Conference 2017を開催させていただきました。100名の会場が満員になるほどの盛況ぶりで、ありがたい限りです。この場でも重ねて感謝を申し上げます。

さて、私は最初に10分程度のご挨拶と、ラストのセッションを担当させていただいたのですが、冒頭に「温故知新」というキーワードを挙げさせていただきました(すっかり忘れていて後で思い出しましたが、今年の夏のYAPC関西が「温故知新」でしたね)。

1900年のニューヨーク五番街と1913年のニューヨーク五番街

冒頭のスライドで紹介させていただいた2枚の写真。元々W3Cの会合で慶應/W3Cの村井先生に紹介いただいた写真なのですが、10年という年月の長さを可視化するのに良い題材だと思い、使わせていただきました。

1900年のニューヨーク五番街 1913年のニューヨーク五番街

この2枚の写真、実は馬車の大群の中に自動車が一台(1900年)、自動車の大群の中に馬車が一台(1913年)、なんだそうです。

正確には10年ではなく13年ですが、Movable Type の最初のリリースから16年、WordPress の最初のリリースから14年ということを考えると、その年月の長さとその間の世の中の変化のインパクトを感じさせられる2枚の写真。

2007年はどんな年だったか

翻って、我々が属している業界、マーケットの10年をざっと簡単に纏めたのが以下の図です。

Web業界の10年。最初のiPhoneからGoogle Homeまで。

  • Windows Vista、Mac OS X v10.5(Leopard)
  • 最初のiPhone (Androidは翌年)
  • Movable Type4.0、WordPress2.2
  • PHP最新バージョンは5.2(ver.4系のEOL直前)
  • Internet Explorer ver.7 (IE6全盛期)
  • AWSリリース直後
  • Twitterリリース直後
  • jQuery1.0
  • GitHub、Windows Azure、Google Chromeはまだ存在せず

最初の iPhone(Androidは翌年)がリリース、AWSの最初のリリースが前年という、2017年はひとことで言えばモバイル・クラウド時代の幕開けといった年かと思います。

一方で、Google Trendでいくつかのキーワードを調べてみると

PHP、Perl、Python、Rubyの検索数の推移(10年)。最も人気のあるLL(軽量プログラミング言語)はPHPからPythonへ。

  • 最も人気のあるLL(軽量プログラミング言語)はPHPからPythonへ
  • Movable Typeの検索数は激変、WordPressのシェアが群を抜く

というような変化が見て取れます。

技術的負債とどう戦うか

行き当たりばったりのコードだとは決して言いませんが、10年(コアのMTは16年)経過したことによる技術的トレンドの変化を考えた時、さぁどうするか。10年というのはそれを考えるきっかけとしたいと考えました。

  • 負債の払い戻し: 技術的負債だと思われるコード、フレームワーク、プラットフォームをリファクタリングするか、置き換える。
  • 負債の転換: 現在の解決策を「完璧ではないけれども良い」解決策と置き換える。新しい解決策は、より低い利率であり、完璧な解決策を構築すると非常に高価になるならば、よい選択肢かもしれない。
  • 利息のみ支払う: コードとともに生きる。リファクタンリングは、それほど良くないコードに取り組むよりも高くつくから。

PowerCMSは十分に大きなプロダクトですが、何よりも非常に多くのお客様・パートナー様に導入いただいている現役のプロダクトです。各所で述べられていますが、この問題の解決には、リファクタリングのためのリソースの確保、決済者へのネゴシエーション、社内外交など様々な阻害要因があります。

当社の方向性は、上記の3つの方向性からすると、こうです。

  • 負債の払い戻し = 新しく書き直す
  • 負債の転換、利息の支払い = 現行バージョンの次期バージョン

両方を行うこととしました。

大切なのはトップの腹の括り方

これができたのは、自分がコード書きでもあるから、というのがやはり大きいと思います。そして、現在のビジネスが上手く回っていること。もし自分がコードを書けなかったとしたら、もっと大きな決断が必要だったろうと思います。

イベントの参加アンケートを拝見すると、両プロダクト共に期待していただけているようで少しホッとしていますが、きちんとリリースすること、良いものを作ることがお客様・パートナー様に応えることに繋がりますから、身の引き締まる思いです。改めて、10年を支えていただいたお客様、パートナー様、そして社員の皆さんに深く感謝いたします。

ありがとうございました。そして、今後とも引き続きどうぞよろしくお願いします。



このブログを書いている人
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野田 純生 (のだ すみお)

大阪府出身。ウェブアクセシビリティエバンジェリスト。 アルファサード株式会社の代表取締役社長であり、現役のプログラマ。経営理念は「テクノロジーによって顧客とパートナーに寄り添い、ウェブを良くする」。 プロフィール詳細へ