インターネットはからっぽの洞窟。

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たまには普通に書評なぞ。といっても古い本だけど(たまたま今日読み返した)。

この本が書かれたのは1996年。既に10年以上前のものである。著者のクリフォード・ストールは天文学者なのだが、ローレンス・バークレー研究所にいた時にハッカー(当時の表現)の追跡のおかげでネットワークセキュリティの専門家と言われるようになる。この時の事件については彼の最初の著書「カッコウはコンピューターに卵を産む(上) (下)」に書かれており、この本は世界的なベストセラーとなった。

エントリーの標題の「インターネットはからっぽの洞窟 (原題 : Silicon Snake Oil -- Second thoughts on the Information Highway)」はストールの2冊目の著書である。

この本(日本語訳 : 倉骨 彰氏)のカバーにはこうある。

インターネットで仕事が変わり、社会が変わり、世界が変わる−でも、本当にそうなんだろうか?

題名からも分かる通り、当時の既に過剰とも言えるインターネットブームに対して負の側面を当時のネットワークの「ヘビーユーザー」であった著者が指摘したものだ。

もちろん10年以上も前のことであるから彼の主張や当時懸念されていたことの多くは現状解消されている。インターネットでのショッピング(決済)や優秀な検索エンジンの登場、書籍を探すのも随分簡単になった。

ところが、ネットワークについて無知な学者が書いたインターネット悲観論ではないがゆえに現在のネット社会について示唆的な記述が多く見られる。

実は何ら解決していないのが現在のインターネット社会じゃないか、という見方もできる(そういう表現が多くある)。

僕はたまたま今日埃っぽい本棚からこれを取り出してそれこそ10年ぶりにぱらぱらと読んでみた。以下少しだけ引用する。

モデムにご主人をとられてしまったジェニーが教えてくれた。(中略)「でも、デービットに比べたらまだましかもね。彼、私の友達なんだけど、毎晩3時間もネットワークするようになっちゃって。奥さんもいい人で夫婦仲も良かったんだけど、彼をネットワークにとられたと感じて離婚しちゃったのよ。」

誰でも意見を自由に発表できるというのは本当だが、ネットワークでは誰もがいっぺんに好き勝手なことを言いはじめるから、真面目な議論などかすんでしまう。

ネットワークユーザーの中には極端な意見を述べる人が多く(中略) まともな議論になかなか発展しなかったりする。

(中略)

まともに始まった対話が、フレイムウォー (侮辱合戦、誹謗中傷合戦) にまで発展してしまう割合は驚くほど高いのだ。

コンピューター自体の演算速度は速くなっているのに、プログラムの実行速度は遅くなっているのも解せない。

その他にもジャンクメールの話とか、メールが増えすぎたがフィルター使うと大切なメールまでフィルタリングされたりしないか気が気じゃない話とか、ネットワークや電子メールをコピー&ペーストした論文に質の高いものがあるのだろうか、とか...

結局のところ、インターネットとはいっても根本のところでは何も進歩してないんじゃないかと思うような指摘が多くあって、楽しめるというのもおかしな話だが、結構考えさせられる。

ことインターネットについて言えば10年前に書かれた未来予測を読む価値はあまりないように僕自身感じるけれど、この本については (特に) 若いIT/Web業界の人は読んでおいて損はあるまい。送料はともかくユーズド (amazon) なら安いものだし。

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このページは、Junnama Nodaが2007年8月21日 01:17に書いたブログ記事です。

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