アルファサード株式会社 代表取締役 野田 純生のブログ


小学生のためのWebサイトづくり


公開日 : 2005-05-29 01:40:54


Webに関する様々な書籍や雑誌記事、Web上でのノウハウが公開されているけれども、子供たちに向けたWebコンテンツを企画し、制作する際のノウハウは中々見当たらない。 先日、「子供にとってのWebアクセシビリティ」って企画があって僕自身も参加したのだが、消化不良なところがあって、ならば、いそのことWebサイトをつくる現場で、子供たちの声を聞きながら作ってみよう、という試みを行っている途中。 Web上のリソースとして「Alertbox : ティーンエージャーのためのウェブサイト・ユーザビリティ」があるけれど、サイトを作る目的、日本固有の問題とかを意識しだすと、必ずしもマッチしないところが出てくるので、僕が感じたこと、現場でおこっていることをまとめてみようと思う。 今回の企画は、中央官公庁のつくる、教育・学習を目的としたコンテンツである。小学生が自宅でパソコンをつかってWebを利用することは「ある」けれども、誰がこのようなコンテンツに自主的にアクセスしようと思うのだろう?まず、そんなことはありえなくて、授業の中での利用が中心となる。子供に限らないけれど、彼らがインターネットの海に出ていくとき、官庁や企業のつくる「子供向け」のサイトは、「ポケモン」や「ムシキング」といった競合と比較されるわけである(実際にアンケートもとったけれど、明確だ)。 であれば、学校での利用に限定して考るのが合理的ではないか。学校でWebはどう活用されているのか。

シチュエーション
ある小学校では「総合的な学習の時間」をパソコン系の授業と英語学習に活用しているという。パソコン室があって、30台程のパソコンがあり、インターネットを利用してWebを活用できる。その教室を利用して授業を行う。せいぜい週一回。
インフラ
思いのほか悪い。回線は、小学校の上位の組織(教育委員会、あるいは関連する組織)のネットワークにぶらさがっている。フィルタリングは必須で、「有害」コンテンツにはアクセスできないようになっている。掲示板やチャットを利用して双方向のコミュニケーションは困難である。メールアドレスを持てるわけでもないので、メールを介したコミュニケーションの仕組みも成り立たない。そして、何よりも回線速度が充分で無い。また、数十台のPCを購入するということが、学校にとってどんなことであるかに思いを至らせる必要がある。そうそう買い替えられる訳ではない(学校の購入する備品の中で、こんなにも短期間に「古くて役に立たなくなるもの」は他に考えられない)。今回見学させてもらった小学校と中学校で、OSはWin98だった。
画面の解像度は800×600だった。モニタは15Inch。Webの利用時に文字はかなり大きく表示されているように見える。 我々が既に失敗したことの一つがこれだ。左側にナビゲーション、画面の下部に用語説明のエリアをつくったのだが... コンテンツの表示エリアがあまりに狭くなってしまった。
小学生向けの情報提供においては、古いPC、遅い回線、ロースペックの環境に留意しなければならない。
Flash
ナレーション等、音の鳴るFlashコンテンツは授業においては邪魔になる。誰かのPCから音が流れると、みんながそこに気をとられてしまう。ヘッドフォンを使えば良いのだが、一度集中力を欠いてしまった子供たちは、そこから集中し直すことが難しいように感じた。 動きの多いアニメーションやゲームのようなものも、そこだけに集中してしまうマイナスが目立つ。動きや動作に気をとられてしまって、肝心の中身が頭に入らない。
コンテンツ
文章を真面目に読む。丁寧に読んでいる。Alertbox のコラムには「ティーンエージャーたちはウェブであまり読みたがらない。学校でうんざりさせられるほど、読まされているのだ。」とあるが、こと日本の、学校におけるWebの利用においては、あてはまらない。「学校で」だからかもしれないが、みんなすごく真面目に文章を読んでいる。そもそも学校でしか、学習や教育のためのコンテンツにアクセスしないのだ。どこでユーザビリティテストをしたというのか?そこにどれほどの意味があるのかね?
操作
クリックしない。テキストリンクで用語の説明が表示されるインターフェイスを提供してみたけど、誰もクリックしない。ボタンをクリックさせるためには、「ボタン!」という主張を多少は大袈裟くらいにも主張する必要があるような気がした。 それと、ナビゲーションは使わない。せわしなくクリックする大人たちとは違うように感じた。もっと単純に、「次へ(○○へ)」のようなボタンがわかりやすく表示されている方が良いように思う。何より、ナビゲーションにつかっている面積が勿体無い。
スキル
個人的にかなり差がある。でも、基本的には高くない。今どきの世代の子供たちだからPCやWebをうまく扱える筈だ、という理屈は通用しない。みんな、結構苦手だし、漢字が読めないから「ルビ」を欲している子供たちも多い。
さて、2週間後にもう一度彼らの声を聞くことになる。今週は中学生と高校生に意見を聞く。



このブログを書いている人
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野田 純生 (のだ すみお)

大阪府出身。ウェブアクセシビリティエバンジェリスト。 アルファサード株式会社の代表取締役社長であり、現役のプログラマ。経営理念は「テクノロジーによって顧客とパートナーに寄り添い、ウェブを良くする」。 プロフィール詳細へ