人が辞めることはそんなに悪いこと? (長文駄文)

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「はてな」が京都へ戻るのが話題らしい。

で、昨年末当たりの人が辞めたことと関係あるとかないとかいうことを言っている人がちらほら。

結論を先に言えば、非上場企業の経営者が判断したことに他人がとやかく言うこともあるまい。

これは、たとえ事実であっても言うべきではなかったと思う。
・合理的判断をしていない
・従業員の利便性より近藤社長の意志を尊重した
ということを明言してしまっているからだ。

普通、本社移転などの重大な事案は慎重に進められるべきもので、

経営陣で方向性がまとまる?従業員に意見を求める?退職者が多く予想される?再検討
・退職者の穴の損失・補充にかかる手間&コストvs本社移転のメリット・デメリットを勘案
・本社移転orそのままorあるいは最小限度の移転・・・など合理的に判断

指しているのはこちらのエントリー

合理的かどうかをこのエントリーから読み取る能力は僕にはないから何とも言えん。

短期的な見方をすれば、例えば従業員数が ? 割減って売り上げが現状維持だったらその会社は強くなったということだろうし、上場企業なら「収益性が高まった」てなもんで評価もあがることだろう。

長期的に見れば、その減った人材による今後の収益や会社の成長へのマイナスを考慮する必要があるわけだが、それは逆に今後の成長戦略への評価と併せて考えるべき問題でしょう?

失った人材による損失への評価 VS 今後の戦略(それが人材損失の理由であるか否かはたいした問題はなく)への評価

従業員が減ったことには固定費減というプラス面もあるわけだから、コストだけに限って言えば

「人件費の減少 と 地代家賃の安い京都に開発拠点を移すことによる固定費の減少 (広いスペースに移ったようだから単純に額だけを見ることもないだろうが、その場合は固定費減のかわりに広い職場環境を手に入れたことになる)」VS 「人材流出によるマイナス面」

ということになる。収益に直結する「顧客」「インフラ」が人材流出によって失われていないならば、「人材流出のマイナス」VS「移転や移転の理由となった今後の成長戦略」を考えて、後者が上回れば移転は成功というそれだけの話ではないのかな。


一方、バレンタインデー(!)にこの長文をポストしたゼロベースの石橋社長のエントリー。めっちゃ楽しく読ませていただいた。

2004年9月創業以来の入社人数8人、退職人数3人。

会社のことも石橋さんご本人のことも存じ上げないので何とも言えないが、受託ベースの会社であれば優秀な数字じゃないだろうか。ただし逆に辞めなければ良いと言うものでもなく、それを感じているからこそのこの原稿なんだと思う。

同じく、非上場企業の経営者が判断したことに他人がとやかく言うこともあるまい。だが、こっちにはちょっとだけとやかく言ってみる(良い悪いの話ではなく、自分の会社を考える際の参考として)。

例えば石橋が2,000万円の仕事をとってきたら、いったん石橋の売上が2,000万円。それをディレクターに1,800万円で引き継いだら石橋の原価が1,800万円で粗利200万、ディレクターは売上1,800万円。ディレクターがエンジニアとデザイナーに仕事を割り振ったらそれぞれ原価が発生、といった形で、各自が必要な粗利を自分で稼ぐ仕組み。

その価格はどう決めるか? 当事者が決める。交渉です。折り合わなかったら他の人に交渉する。場合によっては社内で折り合いがつかなければ社外へ。って、当たり前ですな。

場合によっては社内で折り合いがつかなければ社外へってあたりは僕もその通りで、いやむしろ僕は「社内で折り合いがついても」「社外の方が顧客が喜ぶ」クオリティが生み出せるなら「社内はいらない」くらいに考えている。

だからウチでは表現やクリエイティブのコンペとかの時は、社内と社外で競わせるなんてことを普通にやる。いや、やっていた(最近はコンペがなく、指名いただくケースがほとんどだから、やらない)。

ただ、ここだけ見るとそれって会社か? とも思う。

もちろんそのあたりもちゃんと書いてある。

ゼロベースという会社としては、そういうフリーランサーが苦手な営業、経理などの「経営サービス」を提供し、「好きで得意な仕事だけ」をやってもらいたい。忙しさも自分でコントロールしながら。

なるほどその部分は確かにそうで、ともすればフリーランサーが苦手な『「営業、経理などの「経営サービス」』を提供するってのには意味があるだろう。
ただ、『「営業、経理などの「経営サービス」』はアウトソースすることもできるよね。

長期的に、ゼロベースという会社本体の存在意義は「ブランドマネジメント」。サービスの品質を担保し、ブランディングし、マーケティングする。

なるほどブランドはアウトソースできないから(もちろん理屈やビジュアルをアウトソースすることはできるが)、経営インフラ+ブランド、ブランドがあるからこそとってこれる仕事に関われるという魅力があって(もちろん社長個人の魅力も大きい)、それこそがゼロベースで働く意味だよ、と書いてあるように見えた。

ただ、この場合は「ゼロベース」というブランドと、フリーランサーが獲得したい「自分ブランド」への思いが衝突することがあるだろう。だから、少なくとも現段階においては石橋社長を超えるフリーランサーがそこで働くことはないんじゃないかと思う(これはどこの会社でも同じだろうが)。

ゼロベースに数少ない「ふつうの感覚」を持つ社員の意見:「まったく育てないから、勝手に育て」「べつに隠さないけど、教えないから、勝手に盗め」とか人材募集ページに書いた方がよい。びっくりするほど「育てる」機能を持っていない会社。

ははは、楽しいね。僕もかつてはそう思ってそうやっていた(この場合「やっていなかった」というのが正解か)。


「育てないけど勝手に育つ」ためには何が必要か?

さて、長い前振りが終わって本題。自社の話。

僕は「まったく育てないから、勝手に育て」「べつに隠さないけど、教えないから、勝手に盗め」を最近やめた。

人材については、これまでは正直お恥ずかしい話だがよく辞めていた。ところが気がつくと最近辞めていない。受託系ビジネスの場合は人材が流出することは生産力を即下げるから、おかげで今期は非常に良い数字が出ている。

求人費もかからないし (ブログ経由で一名来たけど広告費は払ってないし何人も面接していない)、人が変わることによるインフラ (ハード/ソフト) コストもかからないから当然と言えば当然だ。

じゃぁ、ここ最近は懇切丁寧に教えるようになったからこういう結果となったのか? いやそれは違うと思う (だって相変わらず何も教えてもらっていないとか中の人に言われるかもしれないしこう書いておくよ)。

これまでは「勝手に育つ人材」であることを求めたり、結果としてそういう目線でやってきたのだろう。勝手に育つ人材は、ウチに来る段階で既に何らかのモノを持っていて、放っておいても育つと。ところが、そんな人材が簡単に来るわけもない。

結果として現状の当社を構成しているのは、「勉強熱心」で「非常に真面目」な比較的若いスタッフが中心だ。フリーランサー指向とは多分違う。そして、彼らが何だか勝手に育っている。

もちろん育っているのは彼ら/彼女ら自身の努力のたまものであって、こちらはたいしたことはやっていない。ただ、少しだけ意識的に進めたことがある。

何をやったか? 「仕事をモジュール化した」。

仕事のモジュール化はワークフローの改善につながり情報発信力にもつながり、おまけにパッケージが出来た(そして、そこそこに売れている)。

基本的にやってことは以下の3点。

  • 徹底的に仕事のプロセスを分解すること
  • 分解されたひとつの仕事に対して再利用できるモジュールをつくること
  • モジュール化出来ない部分が一定比率より多い仕事 (あるいは過去のモジュールが活用出来ない仕事) は受けないこと

そして、その上で、

  • モジュールを組み合わせた「パターン」を作り、共有する (ワークフロー)
  • 役に立ちそうで汎用的なモジュールは公開したりアウトプットする (ブログ、自社サイト、セミナー等)

パッケージ/パターン化するというのは、特定の人材に依存しない状況をつくるということでもある。つまり一人が辞めてもツクルモノのクオリティやプロセス、コストに変化は殆どないという状況をつくること。

そして皮肉なことに、そうすることで人が辞めにくくなった(ただし相関関係はわからない。ただ単に現状の彼らが忍耐強いだけかもしれんし)。

出来上がったパッケージはこれ。これを最も使っているのは誰あろう当社のスタッフである。そしてこのパッケージを作っているのも当社のスタッフである(多くの部分は僕が書いているにしても、モジュールの設計や現場の要望を製品に反映させているのはスタッフだ)。プラットフォームをベースにモノを作っていくスキルがたまり、仕事を通じてモジュールは充実し、パッケージが仕事を生み、収益を生んでいく。

タイトルの話に戻れば、現状の当社にとっては人が辞めるのはあまり良いこととはいえないが、ミスマッチでも無理に残ることが良いことである筈もない。ただし、入れ替わっても大きな問題は無い状況が出来つつあり、そうすることで結果人が辞めなくなりつつある。現状はそういうこと。


追記 :

ついでにもうひとつ。

  • Movable Typeはこうしたしくみをつくるのに非常に向いたツールである。

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このページは、Junnama Nodaが2008年2月17日 14:22に書いたブログ記事です。

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