アルファサード株式会社 代表取締役 野田 純生のブログ


かくして、ウェブ屋1.0は職を失う。


公開日 : 2006-04-22 18:26:31


「グーグル Google 既存のビジネスを破壊する」読了:できる!CSSを使いこなす

破壊される「既存のビジネス」とは、具体的にはどこの会社なのか、あるいは誰なのか。いろいろあるんだろうが、私的に一番身近な会社が「私の会社」であり、一番身近な人というのはそこで働くWebデザイナー、イラストレーター、コピーライター、DTPデザイナーだろう。

グーグル−Google 既存のビジネスを破壊する(著:佐々木 俊尚) 以前のエントリ(職人2.0。)にも書いたが、「ネットのあちら側」で起こっている変革(「革命」とはあえて呼ばない)によって、既に声価を得、仕事を得たこちら側のワーカーは今後益々脅威にさらされるのである。 ウェブ屋とて例外ではない。「ウェブ」とか「IT」とかいっていても殆どのウェブ屋の実態は「こちら側」に属している。クライアントがいて、コンペや何かを経て受注して、作る。作ったデータはネット上に置かれるわけであるが、ビジネスモデル(お金の流れにしてもそうである)は極めて1.0の世界である。 ここでは、ウェブ屋1.0が何故職を失っていくかについて書く(勝手な考えである)。

ウェブサイトは既に存在する

ネットバブルが弾けたあたりの話しや、ライブドアが BtoB が一巡してしまってからBtoCへ転換しようとして...云々の話は聞いたことがあるだろう。主だった企業は既にウェブサイトを持っていて、新規につくる必要がなくなってきている。リニューアル需要というのは確かにあるが、新規立ち上げの需要は明らかに減っている。 新興企業などで新規案件の需要は増えていく部分もあるが、ウェブ/IT系の新興企業であればまずは内製だろうし、そうでなくても既存の企業のように既存のウェブ1.0屋との付き合いも先入観もないから、ウェブ屋1.0は後述するウェブ屋2.0(経験豊富なウェブ屋1.0の8割や9割の仕事ができて、コストが半分のウェブ屋)との競争に勝てない。

BlogとCMSで更新ニーズがなくなる

ここでいうウェブサイトとは、クライアント企業がウェブ屋に発注してつくるサイトを指す(従来型ウェブサイトとでも呼ぼう)。 従来型ウェブサイトの競合はBlogでありCMSである。ページの更新に高い費用をかける必要はなくなったから、まずその分の需要がなくなる。 自動改札によって切符を切る改札の人員が要らなくなったようなものだ。 ※さて、これで「新規制作」「リニューアル」「更新追加」のうちの2つが既になくなってしまった。

学習コストと参入コストが低下する

「学習の高速道路と大渋滞」(ウェブ進化論)の世界はウェブ屋にも容赦なく襲いかかる。今やウェブ上にはたくさんのリソースがあり、学習する環境は実質ゼロで手に入る。以前はそれでも日本語の壁があったが(ドキュメントは常に英語先行だった)、今は日本語でかかれた様々な情報がタダで手に入る。その昔、時間をかけて英語を翻訳したり高価な本を買って学習したことと同じことが、今の若い人はコストゼロで学べるのだ(ネットにしても、従来は細い回線で時間をかけて閲覧していた情報が、今は高速回線、スピードのストレスもない)。 また、ハードウェアは安くなり、オープンソースによりソフトのコストも下がった。はじめることにコストがかからなくなったのだ。 さらに、「公開されたAPI」によって、開発コストも下がっていく。これまでにさんざんコストをかけてきたウェブ屋1.0に、チープに参入してきたウェブ屋2.0が勝負を挑んでくるわけである。それだけではない。ウェブ屋1.0は人件費も上がってしまっているのだ。 今や、経験豊富なウェブ屋1.0の8割や9割の仕事ができて、コストが半分のウェブ屋2.0がどんどん流入してくる。 ※さぁ、仕事が減っていくところに、ローコストの競合が参入して来てしまった。

SEOがなくなる

これはウェブ屋1.0というよりウェブ屋1.1なのかもしれないが、SEOという概念がなくなるだろう。 検索エンジンは、「情報の価値」にのみ基づいて検索結果の順位を反映させることがゴールであり、人為的なテクニックは排除されていく。「アクセシビリティを向上させて検索フレンドリーなページをつくる」みたいなことは、今やウェブ屋1.0なら誰でも知っているだろうし、これからは「情報に価値を与えることができる」人にSEO屋の仕事が流れていくだろう。また、BlogがSEOによい、みたいにCMSがSEO(アクセシビリティ)を意識したつくりになっていれば、それ以上何もすることがない(というよりも、情報の価値を高め参照する(リンクする)価値が高い情報を発信することにコストをかけるべきなのだ)。 また、順位に一喜一憂するくらいなら、OvertureとかAdWords に出稿してしまえば良い。OvertureやAdWordsは「町のお店の店主」が自分で使えるから、ここでもウェブ屋には仕事が来ない。 ※これまでの付加価値も、もはや付加価値ではなくなって行くのだ。 とまぁ色々と書いたが、ウェブ屋1.0がどうにかやっていけるのは、ウェブのパイがまだ広がっている傾向にあるからだろう。「紙」を「電子」に置き換えたり、ウェブサイトにもっとお金をかけよう、という企業は確かに存在する。 もう一つは、ウェブ屋2.0と闘うために、コストをおさえているからだろう(もちろん、そうではないところもあるだろうが)。低賃金・長時間ワークで何とかカバーしているのである。 長く続くとは思えない。さて、ウェブ屋1.0はどうするのだ? ※もちろん、自分のところは大丈夫だ、という方はそれはそれで構わない。  考えておいて損はないテーマだと思うけれども。

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野田 純生 (のだ すみお)

大阪府出身。ウェブアクセシビリティエバンジェリスト。 アルファサード株式会社の代表取締役社長であり、現役のプログラマ。経営理念は「テクノロジーによって顧客とパートナーに寄り添い、ウェブを良くする」。 プロフィール詳細へ